黙るという防御バフと、無能マントの話



「思ったことはなんでも言います!」

そう言うやつに限って、だいたい愚痴しか言ってないことが多い

最初は正直者っぽく見えるんだけどな。真っ直ぐそうで、裏表なさそうで。でもよく聞くと、主語がどこにもない。「こうだからダメだ」「普通こうするだろ」「だからこうするべきだろ」。で、最後はキレてるだけ。要するに「俺は不満だから、お前ら動け」って話だ。


愚痴自体が悪いとは思ってない。毒抜きは必要だ。ちゃんと「俺は今しんどい」って言うなら、まだ人間味がある。でも、正論の皮を被せた感情の投げ捨ては違う。それを受け止める義理は、どこにもない。


だから俺は黙る。

口は災いの元。死人に口無し。昔の人は経験則を短文にするのが上手い。周囲の声なんて、サテンのおばちゃん会議くらいに思って聞き流す。名指しで来るまでは突っ込まない。これは我慢でも諦めでもなく、防御バフだ。常時展開型のやつ。


黙ってると、面白いことが起きる。

「あいつに言っても無駄だな」って判断されて、愚痴先が別のやつに移る。ヘイトをどうぞ、って感じだ。サンドバッグになる気はない。ただそれだけ。


もともと俺は、頼まれたらやっちゃう側だ。ちゃんと困ってるなら動くし、「任せたい」って言われたら応える。だから一時期は、嫌な仕事が自然と集まってきた。無意識に「あいつに振ればいい」って学習される。あれはな、気づいた時にはもう道具だ。


それが嫌で、今は無能マントを羽織ってる。

知る人だけが知ってりゃいい。わざと使えないフリをする忍びスタイル。本当に必要な場面だけ動く。それ以外は姿を消す。効率も悪くないし、何より楽だ。


黙るのは負けじゃない。

引き受けなくていい感情を、素通りさせてるだけだ。

今日も俺は静かに生きてる。ぼっちスペシャリストって、そういうもんだろ。

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